PiPiPi.......
暗く寂しい真夜中に突然鳴り出した携帯電話
夜空から目を離し、画面を見ると見知らぬ番号
自分の携帯の番号を教えているのは、今共に暮らしている、雨、ジン太、テッサイのみ
一体誰だろうか
別に放っておいてもいいのだが、暇だったこともあり、興味も湧いて出てみることにした
そう名乗った彼女は、ぽつりぽつりと自分の身の上話をした
自分のこと
仕事のこと
友人のこと
彼氏のこと
尸魂界で色々な人を見てきた自分には、彼女は恵まれている環境にあると思った
そしてその恵まれた環境に文句をつけるなど、ただの人間の醜い欲に過ぎないと
初めはそう思っていた
折角興味が湧いたのに所詮は人間、欲深い生き物だとため息をつこうとしたとき、彼女がこう呟くまでは
"寂しいんです..............."
孤独...........
人は回りに沢山いるのに、誰も自分の味方ではない
誰も信じられない
誰にも打ち明けられない.....
彼女はそう言った
そして自分にも、その感情には覚えがあった
それは尸魂界を追放されて、間もない頃
知り合いのいない現世
しかしそこで生きなくてはならない
頼るアテもないのに
急に人間というものが、彼女が弱くはかなく、そして自分に近いもののように感じ、それまでの呆れた感情が消え去った
「ねぇさん」
"....はい?"
「寂しくなったらいつでも、アタシに電話してくださいっス」
"......え?"
「寂しい夜、独りで過ごすのはつらいじゃないっスか」
"................いいんですか........?ご迷惑じゃ....."
「ぜーんぜん平気っスよぉ。アタシも寂しい男ですから♪寂しい者同士、話したいじゃないスか」
".......ありがとうございます....."
おどけた調子でそう言うと、彼女はほっとしたように息をついた
彼女に寂しい思いをして欲しくない
そう思って言った、心からの言葉だった
「じゃ、さん、明日も仕事っスよね?早く寝ないともたないっスよ〜」
"え?あ、もうこんな時間!?"
「おやすみなさいっス。さん」
"喜助さんも.....本当にありがとうございました"
「いえいえ。では、いい夢を....」
そして電話を切ると、静寂を帯びた現実が返ってきた
しかし何故かそれが暗く寂しいものだとは思えくなっていた
「さん........っスか。是非またお話したいっスねぇ......」
喜助は一人、明るく輝く月を見上げた
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